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2018年2月15日 (木)

一枚の図面から 50-5 機関車編 9600 9618-9657

今回も9618~9657を見ていきましょう。

今回は下周りの図面です。

台枠組立、現物は横長なので、2枚に分割します。
9600_170_1692
9600_169_1691
  この台枠は、真空ブレーキに対応したもので、9618~49601に使用しています。
9600~9617との違いは運転室の床のみと思いますが、図面が無いので不明です。
  台枠の板は1”(25.4mm)厚で、軸箱守は内側に強固にリベット止めされています。
後に、大陸へ送るための標準軌改造にあたり、軸箱守をひっくり返して対応できたのはたまたま寸法が合ったからだそうですね。
  前端バリは1”(25.4mm)、後端バリは5/8”(15.9mm)厚、板台枠の構造が良く分かりますね。
  ランニングボードの板厚は1/4”(6.35mm)9600は最後まで網目板は採用せず、普通の鋼板だったようです。
また、ランニングボード上面のリベットは皿リベットを使用して靴が引っ掛からないように考慮されていました。

バネ装置
9600_157_158
9618から、イコライザは先台車と第1動輪が結ばれて1点、第2~第4動輪までが左右で2点の3点支持となっています。
  9600~9617は先台車から第2動輪までと、第3、第4動輪の組み合わせでしたが、9618以降、重心を前にずらして、第3動輪の最大軸重を13.67tから13.41tに引き下げて、動輪軸中の均等化が図られています。
  第3、第4動輪が下バネなのは火室と灰箱のために上バネには出来なかったようです。

バルブギヤ
9600_129_1301_stitch_50
シリンダ
9600_098_099
9600はシリンダが横に張り出しているのが特徴ですね。

連結棒
9600_123_124
溝が無いので薄いですね、一番分厚い第2第3間の物で1-5/8”(41.3mm)です。

次は動輪、第1動輪
9600_143_144
第2動輪
9600_144_145

第3動輪
9600_142_143

第4動輪
9600_145_146
  9600で必ず話題に上る動輪クランクの位相が左が先行しているという話題。
  動輪の図では、反対側のクランクピンの位置に丸印が書かれていますが、確かに左側が先行する形になっています、これについて、どうしてこの様になったのか考えてみたいと思います。
  9600以前の機関車はクランクの正反対の位置にバランスウェイトがありましたが、9600から左右のクランクの位置を加味したクロスバランス方式に変わったため、 第3動輪以外はバランスウェイトに角度が付くようになりました。
  この角度の向きは、反対側のクランクの側に傾くため、左右のクランクが右先行か左先行かで傾きが違ってくるため、右先行、左先行では動輪の鋳物自体が変わります。
  この図では右バランスウェイトが右に振っていますが、右先行の動輪では全く反対の形になります。
この、鋳物自体が変わってしまうというのが大きくて、この機関車の設計がどんどん進んでいき、図面を完成させる時期は戦場のような忙しさで、どこかに勘違いがあったのか、設計段階でバランスウェイトを反対に書いてしまい、そのまま製作現場に流れてしまって、木型の完成まで終わってテストショットまで行ってしまった後で左右逆で作られていることに気が付いたと思うんですよ。
このような大型で一部に体積の大きい部分があり、信頼性の高さが要求される鋳造は非常に難しく、鋳造も熟練の経験が要求されます。
テストショットの段階で、鋳造のエキスパートが試行錯誤を繰り返して作り上げたものと言えます。
その段階で反対に気が付いたとしたら、もはやもう一度1か木型を起こして鋳造をやり直すとなると、現在の大型の木型の費用を考えた場合、莫大な損失となり、工期にも影響が出ます。
  そのように考えると、左先行を変えられなかった理由が見えてきます。

  では、それまで日本は全部が右先行であったのか?
手元の資料で見る限り、国鉄系の機関車は全て右先行と考えてよさそうです。
日本に最初に来た英国製の機関車は右先行が標準で、それ以降は全部それに合わせたと思われます。
  私鉄等を調べたところ、ドイツ製の私鉄向け機関車に左先行が見られます。
これはその一例、クラウス製、花岡鉱山1,2号機です。
67546755_z452_12_a2_300
  私鉄の機関車は大抵の場合、国鉄工場でメンテナンスをするので、こういう左先行の機関車も整備していたはずで、標準のクォータリングマシンが使えないとは言え、地方鉄道に特別高価な整備費用を請求したとも思えず、致命的と言えるほど大きな問題ではj無かったように思います。

炭水車はこの系統から450立方尺の3軸車になります。
9600_450_6001_4
炭水車のタンク
9600_450_212
台枠
9600_450_201
配管
9600_450_200
このシリーズの図面はここまで。

次回は、9633の詳細写真を掲載します。

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コメント

なるほど、今まで知らなかったこと、わかりやすいです。
台枠、動輪も見たかったところで、このあたりから攻めていこうかと思案しています。
 当たり前ですが、動輪は各軸違うんですね。
初めて知ることが多いですが、輪芯、タイヤの厚みに比べて、「クランク」「バランスウエイト」が思った以上に飛び出しているのですねえ。

投稿: みつる | 2018年2月16日 (金) 08時05分

左先行としてご提示の近江鉄道5-7号機ですが、カウンターウェイトの傾きも平面図(一角法)も右先行に見えますけど・・・
国鉄に修繕委託した左先行の民鉄機が何両有ったかは存じませんが、9600形770両の左先行を正当化する理由にはとうてい成り得ないと思われます

投稿: たかひろ | 2018年2月16日 (金) 14時06分

あらあら、添付する図面を間違えちゃいましたねぇ。
差し替えておきます。
左先行に関するご意見、一人の意見として承っておきます。

投稿: クラーケン | 2018年2月16日 (金) 15時43分

A博士もそうやって図面をさっさと差し替えりゃ好かったんですけどねぇ
武士道などと意地を張り続けた日にゃどうも・・・

投稿: たかひろ | 2018年2月17日 (土) 16時49分

私は、意地というより木型作り直しのコストを考えたんだと思います。
今でも木型は本当に高コストですからねぇ。

投稿: クラーケン | 2018年2月17日 (土) 17時43分

その一方で同じ動輪径で右先行の4110形の動輪を同じ川崎でイチから起型してるんだか全く訳が判りませんねぇ

投稿: たかひろ | 2018年2月17日 (土) 19時53分

最近、鋳造を勉強する機会があったのですが大型の鋳造はおっしゃる通り技術的にかなり高度で、検査方法も未熟な時代に動輪輪心のようなあれだけ大型の鋳物をよく量産できたなと思います。また話は変わりますが本当に木型は高価ですね。そして木型の置いてある鋳物工場は各メーカー限られているので時間と費用の制約がかなりある話も聞きます。そのため3次元プリンターで木型を低コストで作れないかという研究があちこちでなされているようです。

投稿: 道草人生 | 2018年2月28日 (水) 23時35分

川崎は周知のように前身が造船所で明治30年代より三段膨張機関を初めとする大型鋳造品を内製していたので機関車の動輪程度はさほど困難を感じなかったんじゃないでしょうか(気筒は艦船と勝手が違って当初歩留まりが低かったようですけど)

投稿: たかひろ | 2018年3月 1日 (木) 09時53分

6700のシリンダでは苦労したと何かで読みましたねぇ。
船のシリンダに比べると小さいので、何かと違うんでしょうねぇ

投稿: クラーケン | 2018年3月 2日 (金) 18時42分

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