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2016年1月28日 (木)

一枚の図面から 47 図面あれこれ

  前回のお話で、ちょっと図面の事を書いたので、今回はその図面の事についてちょっと語ってみようと思います。

  私の本業は図面書きなんですが、この仕事に手を染めるきっかけは、小学生の頃に出会った中尾豊氏のスタイルブックだったと思います。
  その後、機関車の系譜図等で精密な組立図を見るに及んで、スタイルブックが組立図から書かれたことを知りました。
  それ以降、出版物等によって図面探索の日々を過ごしたわけですが、新しい図面や資料に出会うことはまれな事だったんです。

それが一気に進捗したのが・・・・・内緒ですよ。

  さて、鉄道に限らず、工業製品として製造されるものには、例外はあるとしても一般的には図面の上で設計を進め、その結果、設計者の考えを物を作る作業者に伝えるためのコミュニケーションツールとして図面を書くわけですが、その図面は誰が見ても同じように理解できるように一定の約束事があり、現在はJISの製図規格というもので定められています。
  私などはそれに準拠して図面を書くわけですが、趣味の世界では、何十年も前の図面とか、海外の図面等を見る機会が多いわけですが、100年以上前の海外の図面でも全く問題なく読む事が出来るんです。
  そういうことで、現在の製図規格は基本的に産業革命の頃に確立した方式が元になっているんです。だから、100年前の図面でも全てが揃っていれば、今でも同じものを作る事が出来ます。

   模型を自作する場合には、機関車の系譜図等に掲載されている組立図と呼ばれる図面を元にすると思いますが、この組立図とはどういう図面でしょう。
  図面は、地図で縮尺が違うように、大きなものから小さい物まで親子関係というものがあり、実際に物を製作する図面は、親子関係の最下層にある物なんです。
  その製作図の上には、製作図で作った物を組み立てる図面があり、その図面では基本的に物は作らず、部品を配置して、組立をするためのボルト等の手配をするための図面となります。それが組立図と呼ばれるもので、その組立図で作った部品を集めてさらに大きい物を作る組立図があります。それがどんどん積み重なって、最上部にあるのが「総組立図」です。これが良く見る機関車組立図と言う事です。
  こう書いてもなかなか理解できないと思いますので、一例を紹介します。
まず最下層の製作図として、「車輪」の製作図、それに「車軸」の製作図・・・それらの組立図が「輪軸組立」、それに「バネ組立」「台車枠組立」「枕梁組立」・・・・それらの上に「台車組立」があります。それに「台枠組立」、「炭水庫組立」等が集まって「炭水車組立」となります。それに「機関車組立」が加わり「機関車総組立」という訳です。
  このようになるので、物を作るには多くの図面があり、細かい部品図等を合わせると1両の車両に数千枚もの図面が必要となります。

  1枚の図面は正面図、平面図、側面図というように、物を各方面から見た図を書いて形が把握できるようになっています。
  一例として機関車組立図では真ん中に機関車を横から見た側面図、機関車が左を向いている場合は、その左に高さ等をきっちり合わせた正面図、これは機関車を前から見た図になります。側面図の右には機関車を後面から見た部を書きます。側面図の上には機関車を上から見た平面図があります。それらに加えて、必要に応じて断面図等を書きます。
この考え方は一例で、日本の昔の図面や海外等では模擬に正面図を書くものも有ったりしますがちょっと見ればどういう書き方をしているのかはわかります。
一部の本等で、せっかく組立図を載せているのに、スペースの都合か側面図だけしか載せていない場合を見ることがあります。これでは切り絵細工を見ているようなもので、立体にはならず、必ず他の図も載せるべきと思います。

  国鉄では、車両の整備のために、車両が配置されている機関庫や工場等に配布するために図面を印刷した図面集を作っています。これはある程度広範囲に配置される車両の場合で、両数が少ない物や配置が限定される物などは図面集を印刷しないで、図面を一枚一枚コピーして、関係施設が所有します。もちろん本部には全部の図面の原紙とコピーが保管されるのは言うまでもなく、設計担当がそれらの図面を見て、改造等の設計をします。

  研究者としては、1両の車両に対しても、組立図1枚ではなく、出来るだけ多くの図面があれば良いわけで、上記の図面集があれば言う事なしと言う事になりますね。

  では、組立図1枚ではなぜだめなんでしょう?
  物を作るのは部品の製作図で、その上の組立図は、多少形が違っていても組み立てさえ出来れば良いと言う事です。だから、製作図に不備があって作る段階で設計変更した場合、製作図はちゃんとした形に書きますが、組み立てるだけの組立図は、細かい違いなどではいちいち変更しないことが多くあったんです。
  現在のCADでは図面の修正は至極簡単ですが、トレーシングペーパー等、扱いのデリケートな用紙に墨入れで書かれた図面は、消すのが容易ではなく、修正は必要最小限に留めるという傾向にあったんです。
  それは上位に上がるほど多くの変更が集積することになり、全体の組立図に全てが反映されると言う事自体珍しいとも言えるんです。

  そういう訳で、元が組立図しかないもので、それを元に新たに組立図を書く場合、残された製造時の写真とは異なっている部分が少なくなく、多くの矛盾に直面することになります。

本当に長々と書いてしまいましたが・・・

  前回までの機関車史研究会の出版物の巻末にある組立図は、単に元の組立図をトレースしたものではなく、そういう矛盾点を徹底的に究明して仕上げた図面なんです。

  今日現在、近藤一郎さんは、刊行予定の「ボールドウィンの機関車落穂拾い(仮題)」に載せるべく組立図を作図中です。
それがこれ、まだまだ未完です。
1601264_2

  この図面ってどこかで見たことが・・・って思う方も居られるでしょう、この機関車は豆相人車鉄道から熱海鉄道に変わって初めて導入したボールドウィン製の最初のへっつい機関車で、元になるメーカーの組立図が、RMライブラリー160号、湯口徹氏著、「へっついの系譜」に出ています。
  この機関車の組立図作成にあたり、元図では寸法の矛盾や不明な線等、何度か議論したんですが、他の図の例にもれず、苦労しておられます。
  まぁ、苦労とはいえ、一枚の図面を仕上げるまでには多くの不明点や矛盾があり、それらを納得がいく形で解明できた時には達成感があり、結構楽しい作業です。
私も書きたいんですが、時間がなかなか・・・

  近藤さんは今はCADで作図されていますが、以前はマイラー紙に手書きをされていました。鉛筆で下書きし、ロットリングで墨入れします。
  金田さんは、ロットリングではなく、烏口で仕上げをされていたそうで、インクの補充や常に先端の研磨をする必要があり大変だったと想像します。
  近藤さんもそうですが、破線や一点鎖線等の交点は線で交差させるという面倒なやり方で書かれています。私も手書きの頃はそのように心がけましたが、仕事では時間を掛けられないので、なかなか実現できないものでした。
CADの時代になって、そういうことは出来なくなりましたが、図面自体はずいぶん楽に書けるようになりましたねぇ。

さて、次は何を書きましょうか。

さくいん 1  国鉄
さくいん 2 私鉄、海外
さくいん 3 模型、その他

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コメント

まいど
図面、、、何を書くか、お悩みの様ですがこちらの第一希望”3900”ですが、組み立て図一枚ではなかなかでしょうな。
第二希望”9850”は如何でしようか、、資料は十分。
 当然、1/45で御願いします

投稿: はた坊 | 2016年1月28日 (木) 03時17分

3900は図面を見れば見るほどなぞが深まるばかりで、ほんまにおもしろいんよ。
だから、いずれは組立図の全部の線の意味を解明したいと思ってるんやけど、結構時間が掛かる。
それまでに先に9850やる?
9850なら、図面があるから相当なとこまでできると思うよ、メカ部分のみ手伝ってもええけどね。
それより先に7950の動輪削らんとね。
モデラが前に削った分の負担でスピンドルを交換せんとあかんけど、交換部品はあるものの気分的に面倒で・・・
けど、そろそろやります。

投稿: クラーケン | 2016年1月28日 (木) 10時25分

そうです。
自分が描いた図面すら、日時が経っていたら信用してはいけません。^^;

投稿: よこやま | 2016年1月28日 (木) 23時12分

よこやまさん
結局は最初に書く時の資料の信憑性ですねぇ。
これが決定版っていう資料があれば万全ですよ。
その為には実物の図面集がベストですね。

投稿: クラーケン | 2016年1月28日 (木) 23時41分

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