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2014年9月15日 (月)

一枚の図面から 30 機関車編 アプトの機関車 3980-5

長らく続けてきました3980も今回までです。

 3980の最後の2両は、長らく写真が発表されませんでしたが、レイル31号のP111に突然発表されました。
お持ちの方は是非ご覧ください。

 その写真は驚くべきもので、ボイラ前頭部が明らかに前上がりになっていると言う物です。
 これは初回に掲載した、勾配の下り方に頭を向けた場合にボイラが水平に近くなり、初回に私が書いた疑問が全て解消します。

 今回、この文を書くに当たり、所有されてる方に画像を送って頂いたのですが、非常にドットが荒くて、とても掲載できるものではありませんでしたので、少しはましなレイル31号の写真のコピーを、お叱り覚悟で掲載します。絶対に必要な写真ですので、事後承諾になりますが、どうかお許しください。

6039851923000031_1l_2

 この写真は真横に見えますが、少し後ろから撮影なので、サイドタンクが前すぼまりになっていますので、分かりやすいよう、サイドタンク上部に付いている手摺が水平になるよう画像を少し回転しています。
ですから、画像のサイドタンク上縁を画面の下のラインに合わせればボイラの傾斜は一目瞭然です。

もう1枚は斜め前から。

6039851923000031_2l

 これまでの3980-3983に比べて、明らかに煙室が高くなっています。
そして煙室前板はサイドタンクと一体になっているように見えますので、ここは垂直になってますね。

これら2枚の写真を不鮮明ながら、拡大コピーし、補助線を入れてみました。
39851l

 煙室も火室も上面は傾斜していて、両者は平行のようです、火室はベルペイア式なので、高く見えますが、これは以前説明したとおりカメラの位置のせいです。
 ボイラ前部は他の物と同様、煙室上縁の線に対して前が下がっています。
 サイドタンク下部の切欠きにボイラケーシング下部らしき線が見えますが、ボイラケーシングの線と特定するには暗いし不鮮明でもあるので、ここは考慮に入れません。
 煙突は前に配管があって線が特定できませんが、他のドーム類とともに縦の線を延長したところ、煙突、ドーム、重油タンクとも垂直であることが分かりますね。
 重油タンクの上縁も水平のように見えますが、運転室の屋根とは少し角度が付いているようにも見えるので、実際に角度が付いているのか、レンズの収差によるものか判断が付きません。
 それに対して、安全弁はボイラの傾きに応じた角度が付いているようです。
 運転室と火室の高さ関係は、他の機関車と同じように見えますので、火室底部が基準でボイラ全体を回転させたんじゃないかと思います。

 3982,3983の製造の次の年の完成なので、大きな設計変更ではないと考えられますので、ボイラ自体に変更はなく、台枠に対する取付方法に変更が加えられた物と推察します。
 ドームや煙突は裾の傾斜を変えるだけ、蒸気ドーム内部の蒸気溜はボイラに直角に付いて傾いている可能性があると思いますが・・・、重油タンクはボイラに取り付ける金具の変更で対応できます。
 前は高くなるので、シリンダ鋳物の上部を延長する形になり、木型を改造する程度で対応できますし、モーションプレート等のボイラの受けは板の寸法を変える程度、火室部の台枠との接続もスライド式の受けを変更すれば済みます。
 煙室前面は垂直なのでボイラとは傾きますが、過熱装置等が有るわけじゃないので特に問題はないと考えられます。
 当然内火室と煙室の管板はボイラに対して垂直で、ボイラをさわらなければ意外に簡単に変更できると思います。

もう1枚も
39852l

 こちらは、不鮮明な小さな点の明るさの違いで煙室扉の楕円を書いてみました。
中心にはハンドルがあって特定できるので、大体合ってると思います。
この図のサイドタンク前面の上縁の線と、煙室の高さ関係で比率計算をして煙室前部の高さを決めました。

以上を踏まえて、3980-3983の形式図を元に作成したものがこれです。
39843985_20140906
 ボイラは火室後部で台枠の受けに接する部分を回転の基準としました。
ここを基準にすれば、台枠の変更が最も少ないと考えられるので。
 煙室前面の高さを写真から割り出した高さとして図面を書くと上記のようになります。
ボイラの勾配は、1/30。平坦線と最急こう配の真ん中の値となりました。
ですが、真横に近い写真の角度はもう少しきついので、本当に角度がきついのか、レンズのせいかは分かりませんが、運転室と煙室前部の高さからは図の角度で良いのではないかと思っています。

 この図の上部、1/15の勾配上では、ボイラが傾斜した分、内火室の上板が水平になりません。この部分だけは設計変更した可能性は十分に考えられますが、全く資料がありませんので、不明ですね。

 以上がこの機関車に対する私なりの結論なんですが、
初回に戻って、「汽車会社蒸気機関車製造史」の、「外国製はいずれもボイラを水平に設置していたが、当社製は水平線上にある時は1/15の傾斜をもって煙室側が低くなっている」という一文は、「煙室側が高くなっている」との間違いと言う事であれば辻褄が合います。
 また、同書に掲載されている形式図のボイラが水平であることも、当初の4両がこの水平タイプで、最後の2両のみ文に有るように傾斜していると言う事で、しっくりと来るように思います。

 今までは、組立図や写真等の発見により、従来の研究に対する変更点が出てきたものですが、今回の3980に関しては、3920,3950の組立図が入手できたとはいえ、私のオリジナルの考えの上に立つ研究結果ですので、各人各様で意見が出てしかるべきと思いますし、私の考えは、不明点な点は不明ですので、あくまで私の想像によるものです。
 この私の研究結果に囚われることなく、自由に考察を楽しまれて、議論が高まることを願います。 

 そして、先入観にとらわれることなく資料に向かい、あくまで事実のみを真摯に受け入れ、不明な個所は不明として、自分の想像を押し付けることなく「こういう考えもある」という姿勢で議論して頂きたいと思います。

 今回の検証は、故金田茂裕氏の著作に対する冒涜のように思われる方が居られるかと思いますが、近藤一郎氏が著作で書いてられるように、金田氏は真摯に事実に向かわれる人で、事実の探求の前には地位やプライドは全く関係なく、私の様な若輩者の意見も何ら先入観なしに聞いてくれて、間違いにははっきりと対応される、と思います。
 
 

 私の考えを議論の末納得頂いた銕騎さんとともに、この一文を金田茂裕氏に捧げたいと思います。

たった1形式の事に付き、長文で大変失礼いたしました。
これを機会に、鉄道史研究に興味をもたれる方が1人でも増える事を願っております。

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コメント

一点だけ
蒸気ドーム、砂箱、煙突はボイラー中心線に対して垂直、重油タンク底面は平行と思われます
(つまり四つとも後傾)
ご提示の補助線を入れた写真では、補助線の太さの中に各部品の竪の線が埋没してしまっています
再検討いただければ幸いです

>故金田茂裕氏の著作に対する冒涜のように思われる方が居られるかと思いますが、

誤りの指摘がなぜ故人への冒涜になるのか理解できませんね

投稿: たかひろ | 2014年9月15日 (月) 09時12分

たかひろ様
それはありません。
不鮮明な写真ですが、詳細なdpiでスキャンした物を大きく拡大して印刷したもので、ドットの縁をつないで直線になることを確認しながら検証していますので、これほどの角度で角度を間違えると言う事はあり得ません、一度ご自分でも線を引かれたらわかると思います。
もちろん、元画像が荒いので、その点は大きな問題が残っていますが、こちらの資料ではこれが検討結果と言う事になります。
ついでに、たかひろ様様がおっしゃるボイラ下の線も・・・
私は不完全な線は信用しないので書きませんでしたが・・・

冒涜の件は、あなたの事を書いたわけではありませんよ。

投稿: クラーケン | 2014年9月15日 (月) 09時43分

当方は不確かな補助線など引かず、画像全体を回転させて見る方法を取っています
3985のほぼ正横の写真を線路が水平なところから2度反時計回りに回転してみれば、安全弁、重油タンク、蒸気ドーム、砂箱、煙突すべて垂直になることが一目でお判りいただけると存じます
最後の2両だけ蒸気ドーム、砂箱、煙突の裾を弄るというのも変な話ですよね
絵葉書ではキャブ屋根と重油タンクが平行でなく角度を持ってるように見えますけど、これもレンズの収差のせいにしますか?

投稿: たかひろ | 2014年9月15日 (月) 10時27分

基本的な質問ですが、実際にボイラーを傾けることで運転上のメリットはあったのでしょうか?
オーストリアやスイスのラック式登山鉄道では勾配が急なのでボイラーを傾けるメリットはそれなりにわかるのですが、横軽程度の勾配で傾けてもあまり効果はなさそうに思います。

投稿: ゆうえん・こうじ | 2014年9月15日 (月) 10時30分

ゆうえん様
ボイラを勾配に合わせて傾けると、内火室頂部が露出するまでの缶水がボイラを水平にした場合に比べて有効に使えると思いますよ。
今回添付の図と、3980-3に載せた図の上部の勾配上の場合の「内火室上縁の水平線」のボイラ前端の高さを見ていただければ、ボイラに勾配を付けた方が水位に余裕のあるのが分かると思いますよ。

投稿: クラーケン | 2014年9月15日 (月) 11時29分

たかひろ様
ドーム類の傾きはメールでのやり取りで、何度も何度もお話していることですし、3985の写真に関しては本文に書いているように、サイドタンクは先すぼまりになっており、レール面とは平行ではありません。ですからサイドタンクではなくサイドタンク上縁を水平にしてボイラの傾きを見るべきです。
ドームの裾の加工は当時は手作業で叩き出しだった記録があるので、一部の車両だけの傾きを変えるのは全く問題ありません。
3983の絵葉書に関しては、私の考えは大分前にメールで書いたとおりです。

投稿: クラーケン | 2014年9月15日 (月) 11時36分

今問題にしてるのは3983ではなく3985に限ってのことです
またボイラーが傾斜してるのは疑う余地が有りません
貴兄の形式図3984,3985で蒸気ドーム、砂箱、煙突がボイラー中心線でなくレール面に対して垂直、重油タンク底面がボイラー中心線でなくレール面に対して平行であることを問題視しています

投稿: たかひろ | 2014年9月15日 (月) 11時53分

本当にいい加減にしてほしいんですが・・・
絵葉書は3983の画像しか持っておりません。
 ドームや重油タンクの角度は、何度も書きますが、本文およびコメントに有る通り、私が写真を拡大して線を延長した物です。
一度同じことをされて、図面を書いてみれば分かるかもしれません。

投稿: クラーケン | 2014年9月15日 (月) 13時16分

いい加減も何も、誤認の可能性が大なのでご注意申し上げてるんですけど・・・
3985の絵葉書とは非公開を条件に以前画像をお送りしたものです
本件はこれまでとしますが、貴兄も一度小生の提唱する方法でトライして見て、結果を虚心坦懐に受け止められては如何でしょうか?

投稿: たかひろ | 2014年9月15日 (月) 13時46分

ブログのコメントには相応しくないかもしれませんが、金田さんの著作(自費出版されたもの)が現在でも入手可能なことをお伝えしたいと思います。
書泉グランデ、旭屋なんばCITY店でも買えますが、ヤフオクが便利と存じます。直接ご連絡いただいても構いません。送料は当方の負担、発売時の価格、原則として最新の正誤表を付けたものを提供しています。いくつか売切れのものも出てきております。購入をお考えの方はお急ぎください。
ikondo1067(a)zeus.eonet.ne.jp 宛てにメールを頂ければ、最新の「刊行物リスト」をお送りします。アドレスは(a)をアットマークに変えて下さい。ご連絡をお待ちしております。

投稿: 近藤一郎 | 2014年9月15日 (月) 14時09分

3985の絵葉書って、遠方の前方斜めからの画像が荒い不鮮明な走行中の画像ですか?
この画像では煙室が他のより高い事が分かる程度で、これを根拠に言われましても・・・
実際の所、40通にも及ぶ、このブログ以前のメールの応酬で、相手の考えを絶対に聞かないで、確認できない部分にこだわって相手を攻撃ばかりするやり方にほとほと疲れきりました。
私は本文でも書いているように、確認できない部分は各人の考えで、私の考え自体も単なる1つの案と言う考えです。ですから、ご自分の考えのみが正しいという考え方には賛同できかねます。
誤認かどうかはこのブログを見ていただいている方々が判断することと思います。

投稿: クラーケン | 2014年9月15日 (月) 14時13分

不鮮明で悪かったですね
ですが重油タンクの傾斜は容易に判別可能ですよ
先入観を排すればですけどね

>相手の考えを絶対に聞かないで、

これはそのまま貴兄にお返ししますね

投稿: たかひろ | 2014年9月15日 (月) 15時20分

こんな風になるので「ご勘弁を」と書いたんですが・・・
他の方々とは楽しい議論が出来るんですがねぇ・・・

投稿: クラーケン | 2014年9月15日 (月) 18時54分

以後本件については口を挟みませんので、せいぜい他の方々と楽しい議論をお続けになってください

投稿: たかひろ | 2014年9月15日 (月) 19時53分

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