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2014年9月11日 (木)

一枚の図面から 30 機関車編 アプトの機関車 3980-3

 1回目で書いたように、「前下がり」には、根本的な矛盾点があります。
そして、2回目で検証したように、前下がりはわずかで、ほとんど効果なしと言う事。
しかし、ボイラケーシング上部は明らかに前下がり。

 以上を考えると、ボイラは火室前面からゆるいエクステンデッドワゴントップ(ボイラ頂部のみ勾配が付いている)と考えるのが普通ですが、工作が大変で、この程度の勾配で効果はあるのか。

 ボイラ頂部の傾きは、一応ワゴントップとして考えると、ボイラが前下がりと言うのは消えてしまい、普通の水平ボイラと言う事になります。

もう一つの問題は、3950と3980は伝熱面積が誤差程度の1.3%ほぼ同じと考えると、ボイラがワゴントップと言う事は、後部が太くなっていなくてはならないと言う事。

この段階まで私とずっと論議を交わしていた銕騎さんが、水平ボイラの形式図を書いてくれました。
39803981l
 これは、金田さんが書かれた形式図集で3982-3985の4両に対する図を元に改良を加えた物です。煙室前部が3982,3983と違っているので3980,3981に対するものです。

この図では、とりあえず水平ボイラで、ワゴントップにはしていません。

 しかし、実際のところ、ワゴントップの必要性はどこにあるのでしょう?
ボイラ効率的には、高温の火室付近の容積を大きく、比較的低温のボイラ先端部の容積を小さくするのは、重量面も含めた効果はある程度期待できますが、この機関車の場合、重量は巨大なサイドタンクを小さくすれば良いので問題なく、わずかな勾配のワゴントップはボイラ効率面のわずかなメリットより、ロールベンダーで丸められない事や、板取等の作業上のデメリットが大きく、当時の汽車会社では、まだワゴントップの機関車を作ったことがないという事もあり、私としてはワゴントップではないと思っています。

では、ボイラ上部の勾配は何か。

 それを解明する試みとして、銕騎さんから、上記図面のCADデータを頂きましたので、
この図の元(金田さんの図)を書いた時にはまだなかった、3950の組立図のボイラーと火室を記入してみました。2段の図の上側は、碓氷線の最急こう配の1/15に置いた状態です。内火室上面は最急こう配とほぼ同じ傾きとなっています。
39803983_20140904l
ボイラは4段のテレスコピックで、前から板厚分だけ順に太くなっていて、ボイラ最後部でケーシングとボイラの間隔は最も狭くなり、ボイラ先端ではケーシングとボイラの間隔はかなり広くなっています、煙室とボイラ先端の段差も非常に少ないです。
 この部分、元にした3950の組立図のボイラ頂部の拡大です。
Beyer_peacock_3950_39503959_98377_2
 煙室後部とボイラ先端の段差は、ケーシングで見るとほとんどありません。
赤で書いた寸法は、ボイラと、ケーシングの隙間で、ここにはアスベストを詰めた布団状の物が入ります。
 火室の所の隙間38.1mmは一般的ですが、ボイラ先端部94.5mmは他の機関車でもあまり見ないくらい大きくて、無駄な空間と言えます。

 試みに、ケーシングのボイラ先端部の隙間を38.1mmにして段差を付け、写真に見られる程度の勾配を書いてみると・・・
39803983_20140904l1
1/45の勾配で書くと、ちょうど蒸気ドームの後ろ、第2罐胴後端で水平部とつながります。
当然ボイラ下部も同じテーパになっています。

煙室とボイラ前端の段差も良い感じです。ドーム類はケーシングが傾いているだけなので垂直に立っています。

これで、前回紹介した、512の真横に近い写真のイメージと合ったと思うのですが、いかがでしょう。

 従来の研究では全て、最初の2両はボイラは前下がりで、管板は垂直とかボイラと直角とか議論がありましたが、
私の結論は、ボイラは水平で3950と同じもの、3950との見た目の違いは、ボイラケーシングが3950ではストレートなのに対して、3980ではテーパが付いているため先細になっている、ボイラが水平なので管板は当然直角(垂直)と言う事で、定説と異なりオーソドックスな構造だったと言う事です。

ボイラの伝熱面積が3950と約1.3%異なっている件ですが、詳細図がなくて実測して作ったとの事なので、実測誤差と思います。

結局、3980の初期の2両は、3950のコピーだったと言う事で、外観上の違いを見せた程度と言えると思います。
汽車会社の31両目という製造実績から考えても、コピーなら苦労しても何とか製造できると思います。

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コメント

銕騎さんは、クラーケンさんのテーパーラッギング案に同意されてるんでしょうか?

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 08時43分

クラーケンさんのテーパーラッギング案しか、残されている写真の形態を合理的に説明できる案はないと思っています。クラーケンさんの機関車の形態追及の執念は、半端ではないと思いますヨ。

投稿: 銕騎 | 2014年9月14日 (日) 10時57分

テーパーラッギング案は、512, 513, 3983でボイラー下縁の線(シルエット)が水平に見えるのと矛盾していると思うのですが、それについては如何お考えでしょうか?

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 11時38分

たかひろ様のおっしゃるボイラ下縁の線ってのは、512の写真では2点をつないだ場合で、3点をつなぐと変わってきます。
シルエットは、配管やレバーや細かい部品一つで変わってしまいますが、その見えている明るい点が本当にボイラ下縁かどうか証明できない以上、シルエットを元に考えるのは無理があると思います。

投稿: クラーケン | 2014年9月14日 (日) 12時27分

クラーケンさんには「もう勘弁」と言われましたので、銕騎さんにお伺いしてるんですけど・・・

組立図で当該部分にボイラー下縁と紛らわしい部品は有るんでしょうか?

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 12時48分

たかひろ様
ここは私のブログですし、グローバルな空間ですので、個人的なお話は直接していただくべきと思います。
ですから、これをご覧の方々のご意見を広く伺える場としたいと思います。

3980は組立図がありませんので、何があるかは全く想像もつきませんよ。また、細かい配管などは組立図に書かないこともありますよ。(そういうものは配管図に書く)
極端な話、給油の10mmの銅管でもシルエットではくっきり出ますからね、そのような管は組立図には書きません。

投稿: クラーケン | 2014年9月14日 (日) 13時02分

えぇですから銕騎さんご自身の回答を期待していたのですけど・・・

有るかどうか判らない部品を想定して「ボイラー下縁は水平でない」と断ずる前に、虚心坦懐に3両の写真を解析すべきではないでしょうか
(個人的には当該部分に給油管のたぐいは存在しないと思っています)

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 13時22分

私には512、513、3983のどの写真を見ても、ボイラ下縁の線が水平なのか傾斜しているのか全く判断がつきません。
見掛け上のボイラ下縁の傾きを根拠に使うのは極めて危険です。もっとはっきり言えば、根拠に使うべきものではないと思います。

投稿: 銕騎 | 2014年9月14日 (日) 13時38分

銕騎さん

上下対称のテーパーラッギングとすれば、ボイラー下縁の前部はサイドタンク欠き取り部の前側の垂直部に対して半分より上に行きます(ご自身の形式図でもそうなってます)けど、3両が3両とも垂直部の中央、すなわち3950と同高に見えるということは、「ボイラー下縁は水平」ってことになりませんかね?

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 13時51分

訂正
ご自身の形式図

クラーケンさんの形式図

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 13時53分

あと
「見掛け上のボイラ下縁の傾きは根拠に使うべきものではない」と断言されるからには、余程の論拠をお持ちの事と拝察致しますが、それに至った実例を日本の機関車の形式名だけでもお示しいただければ幸いです
ひょっとして金田さんもボイラー下縁の影を無視してあのような形式図をお描きになってしまったんでしょうか?

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 15時25分

言葉足らずで誤解を与えてしまいました。3980形の台枠は、ラックギアのユニットを避けるために上方に変形しています。そのため、ボイラ下縁(のシルエット)は一部しか見えません。また参照できる3980-3983の写真は、いずれもボイラ下縁あたりは、暗くてはっきり分かりません。したがって、「現在問題になっているケイスでは」見掛け上のボイラ下縁の傾きは根拠に使うべきではない‥というつもりで書いたものです。すべての機関車のボイラ下縁のことを言っているわけではありません。

投稿: 銕騎 | 2014年9月14日 (日) 15時58分

了解しました
では3980に限った話ですが、ボイラー下縁がはっきりしないとなると上下対称テーパーラッギングも根拠の半分を失うことになりますね
(換言すれば下縁が水平の上下非対称テーパーラッギングの可能性もゼロより半分に増える、つまり50:50ということに)

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 16時13分

貴兄の論では、上下非対称テーパーラッギングが、どのような意義があるのかという視点が抜け落ちていませんか?上下対称テーパーラッギングより、製作上も困難を伴う上下非対称テーパーラッギングを採用する意義がどこにあるのか、お聞かせ頂きたいと存じます。

投稿: 銕騎 | 2014年9月14日 (日) 16時31分

小案は
・第3缶胴のみ1/15の斜頂、第1・第2缶胴は3950より径を絞った直頂のベルペア火室付きワゴントップボイラー(缶胴下縁は水平)、利点は勾配上における缶水移動の抑制
・ラッギングは上縁で1/45前後(成行)のテーパー、下縁は水平
・砂箱は中心で1/45前後の前傾(前後対称)
というものです
これで汽車会社社史の記述(針小棒大だが特色をアピール)、見た目のラッギングの上縁・下縁の傾斜or水平など、全て矛盾なく成立します
製造上の困難を言う方が居られますが、創業間も無いからこそ受注拡大を図る必要が有りますので、他と同じ物を造っていては価格や納期でアドバンテージを示すか、新機軸を盛り込んで違いを出そうという気概が無くては民間会社は成り立ちません

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 16時55分

たかひろ様
私とのメールでの議論もそうでしたが、このコメントではそれ以降も大分内容が変わってきて、持論を主張されるばかりで水掛け論になってしまい、私との議論のように収拾がつかなくなりますので、この先はご自身の著書で持論を展開頂きたいと思います。

投稿: クラーケン | 2014年9月14日 (日) 17時04分

貴兄の案の場合、煙室を3950形よりも細くしなかったのはどういう理由によるのでしょうか?罐胴下部の高さが変わらないのであれば、煙室を小さくしても問題はないと思いますが、いかがでしょう.

投稿: 銕騎 | 2014年9月14日 (日) 17時22分

判りました
では本件はこれにて終了しますが、銕騎さんにおかれましては騙されたつもりで小案による形式図をお描きいただけると幸いです

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 17時26分

銕騎さん

前後しましたが、煙室を細くしなかったのは通風面とシンダー堆積との両面への配慮と考えられます

投稿: たかひろ | 2014年9月14日 (日) 17時30分

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