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2014年9月 7日 (日)

一枚の図面から 30 機関車編 アプトの機関車 3980-1

今回は3980、アプト式最後の蒸気機関車です。

 「一枚の図面から」と言いながら、組立図は現在まで見つかっておりません。
3980は日露戦争に向けての輸送力増強をするにあたり、海外への発注では間に合わないとの考えで、まだ操業間もない汽車製造合資会社に発注されました。
 当時、蒸気機関車を作ることが出来る民間会社は汽車製造合資会社が唯一で、製造31,32両目に作った物が最初で、製造は1906年(明治39年)WNos.31,32と1908年WNos.55,56、1909年WNos.59,60の3回にわたり、6両が製造されました。

 この機関車は残された資料が非常に少なく、数葉の写真と簡単な略図と主要諸元程度です、通常であればこれで大体の事は分かるのですが、汽車会社蒸気機関車製造史(1972年汽車会社刊)P72,73にこの機関車の記述が有り、「外国製はいずれもボイラを水平に設置していたが、当社製は水平線上にある時は1/15の傾斜をもって煙室側が低くなっている」という一文が大きな謎を生み出すことになります。

 著名な研究者がこの一文に注目し、スイス等の急こう配の蒸気機関車で採用されているボイラが勾配に合わせて傾いた機関車と同様な機関車と想定して、ボイラーが前下がりの機関車という考えが一般化しました。
 その中で、金田茂裕氏は1/15(碓氷峠の最急勾配)で図を書き、残されている写真との比較で1/15に疑問を持ち、1/30の勾配とした図を書いています(形式別国鉄の蒸気機関車等)。
 これらは、上記「汽車会社蒸気機関車製造史」の一文と、ボイラーに勾配が付いている(ように見える)竣工写真から、ほぼ、この1/30(あるいはその前後)の勾配が正しいというのが定説となりました。

 碓氷峠は横川から軽井沢への一方的な上りこう配で、蒸気機関車は全機横川方に頭を向けて推進運転で勾配を上ります。

こんな感じ
Photo
 勾配を上る場合は推進運転で、トンネル等で運転室に煙が入るのを少しでも防ぐようになっています。
もちろん、機関車を勾配の下に付けるのは、連結器が切れてしまった時の安全策です。
先頭の機関車の次の2両は、ブレーキを利かすためのピニオン付のピフです。

 この形の場合、勾配上でボイラを水平にするにはボイラは、前を上げなければならないのは分かりますね。
 この機関車のボイラが前下がりで成り立たせるには、この機関車だけ、逆向きの軽井沢方に頭を持ってこなければいけません。
もし、この機関車だけ逆向きにした場合、運転の向きがこの機関車だけが変わることになって、機関士は全く別の環境で運転することになり、現場からは絶対に反対が起こります。

 ただでさえ極限の運転技術が要求される運転で、推進運転で最高の性能を出すべく訓練しているところに、一部の機関車だけ前向きの運転となると、全く違う機関車が入ったのと同じこととなり、機関士の苦労も増えるし、事故の可能性が高まります。

 と言う事は、現場からは絶対に反対が起こったはずで、設計当初の段階で没になると想像します。
一部の研究家は、現地の状況を分からずにこのようにしたのではないか、と言う人も居られますが、大勢が集まって行う設計会議は数十回に及び、もちろん現場の人も参加するので、その最終段階まで誰も気が付かないなどとは考えられないと思います。

というわけで・・・
重要な竣工写真を見てみましょう

・・・・・は次回で。

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コメント

「SL」No.4の73ページにも1/15云々の記述がありますね。
同誌72ページのC3、No.512の写真でもボイラーは傾斜が付いているようですが、1/30が妥当のようです。

投稿: railtruck | 2014年9月 7日 (日) 07時51分

railtruck様
「SL」No.4は「汽車会社蒸気機関車製造史」の蒸気機関車の部分のみを、そのままコピーした本ですので、内容は全く同じものです。
その写真の原版を次回掲載しますが、傾斜が付いていると見えるところに問題の根源があります。
このシリーズで私なりの考えを考察しますので、一緒に楽しんでいただければ幸いです。
あぁ、レイルの31号も面白いですよ。

投稿: クラーケン | 2014年9月 7日 (日) 09時42分

「鉄道ファン」1972年7月号の読者投稿欄で、鶴岡秀基氏が当時の運転教範に「炭櫃を軽井沢方、煙突を横川方に向けて・・・」と記されていることを紹介してます
従って「ボイラー前下がり」を前向き運転に結び付ける従来の考えは、こと碓氷線に関する限り的外れということになるでしょう

投稿: たかひろ | 2014年9月13日 (土) 13時05分

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