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2014年8月27日 (水)

一枚の図面から 28 機関車編 アプトの機関車 3920

どんどん交通量が増える碓氷峠では、使用する機関車が不足してきて、初期の3900形4両の増備は、当時の官鉄で権力を握っていたイギリス人のメンツによるのか、豊富な経験を持ったドイツエスリンゲン社によらず、わずか8年前からアプト式機関車を作った経験を持つだけのイギリスのベイヤー・ピーコック社に、試作としてこの機関車を発注しました。

3900に対して、できる限り違いを出したいと考えたように感じますが、アプト機構の基本構造はさほど変えられず、細かい特殊アイディアは自爆して、次の3950は特殊構造は全くなくなり、ベーシックな物になってしまったので、勢いこの機関車の試作的な面白さが引き立ちます。製造は1895年(明治28年)、製造は2両です。

まずは、竣工写真を見ていただきましょう。
L

意図してか斜めになっているのが面白いですね。

まず目を引くのは上部の前後に伸びた煙突ですね。
これは、煙室から上がった垂直の煙突上部に前後方向に回転するダンパがあって、それを操作することによって、煙の排出を前方。直上、後方の3方に切り替えられるようになっています。ダンパは煙突上部から運転室へ行くレバーで操作します。
このような煙突は日本ではこの機関車だけのもので、勾配線なのに26もトンネルがあるこの線の乗務員の環境を少しでも改善したいという気持ちが表れていますね。
せっかくの機構ですが、実際に排出方向を切り替えて運転してみると、排気の通風が悪くて、石炭の燃焼が悪くてボイラーの性能が低下してしまって、勾配線で力を出せないという問題があって、早い時期に撤去されて普通の煙突に改造されてしまいました。

もう一つの試作は、復水装置で、機関車前面、水タンク前面の縦の太い配管。
これは動輪用シリンダの排気管で、煙室への排気をこの管に切り替えることができます。
この管の上部は後方へ行き、サイドタンクの中央より少し前の上部でサイドタンク上部からタンク内へ入りタンク下方の水の中に排気します、水を通った排気はその管の後ろの煙突から排気します。
これは、煙突からのばい煙の排出を減らして、排気の蒸気を水に復元する効果があります。
この構造はロンドンの初期の地下鉄用の蒸気機関車に採用されてそれなりの効果がありましたが、勾配用のこの機関車では、排気を切り替えると上記の煙突と同様、通風がなくなって機関車の力が出なくなって、これもすぐに取り外されてしまいました。

これらの構造を含め、組立図で確認しましょう。
3920_39203921_786832199_a2_400l30

この組立図は今まで発表されていなかったものですが、さる研究家の方がイギリスで発見されて取り寄せたものです。
側面図は中央で切断した図で、サイドタンク等は破線になっていますが、ちゃんと書かれています。断面に着色されたシリンダはアプトのピニオン用です、ピニオンギヤー同士は中間ギヤーを介したギヤー伝導で、中間ギヤーの軸がクランク軸になっていて、そこにシリンダからの動力が伝わります。
非常にわかりにくいですが、よく見ると外側の動輪用のシリンダも書かれています。

煙室のシリンダ排気管が二重になっていますが、細い方はピニオン用、周りの太い管は後方の動輪用の排気管で、ピニオン用シリンダ後方で上記の復水装置へ行くラインと分岐しています。

煙突の切り替え用のダンパは側断面図のように垂直の煙突の前後にあって、図の状態は通常の煙突の状態です。

動輪の外側にある台枠は7/8”(22.2mm)厚の板台枠です。
弁装置は、動輪、ピニオン用ともにワルシャート式ですね。

日本に来てからの写真です。
3653169l

すべての初期の装備を備えた状態ですね。

特殊装備が撤去された後の姿。
3653505wicollection_l

反対側、こちら側の写真は珍しいですね。
3653505wicollection_l_2

サイドタンク上部の大きな板は、増炭おおいです。
リベットの並びにより、サイドタンク後半が石炭庫になっているのがわかりますね。

碓氷峠の電化後の1917年に廃車されました。

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コメント

まいど
T字型煙突もええけど
作るんやったら3900やなーー

投稿: ハタ坊 | 2014年8月27日 (水) 00時54分

OJでアプト!えーなぁ。
私はHOなら3900やけど、OJなら3920の初期がええなぁ。
ラックレールの構想は出来てるんで、OJへの応用も可能、OJを作るとしたら、アプトやりたいなぁ。

投稿: クラーケン | 2014年8月27日 (水) 19時02分

貴重な組立図のアップ有難うございます
まず内火室天井板の急傾斜に目が行きました
天井板ステイが垂直でなく斜めなのは珍しいと思います
あと火床が広い!
外側台枠だから幅が取れるんですねー
お手数で済みませんが、ついでの折にでも台枠内幅、内火室内法(長×幅)、外火室外法(長×幅)をご教示ください
デハ

投稿: たかひろ | 2014年8月28日 (木) 17時06分

たかひろ様
さすがに目の付け所がいいですねぇ。
組立図に明記はされていないのですが、図面を実測すると内火室天井板の傾きは1/15程度ですよ。
言わずもがなですね。
これは3950も同じ位、3900は少し緩くて1/19程度です。
3980の後期のボイラーが傾いたやつは天井板は水平なんでしょうかねぇ。
3980はちょっと面白い検討をしてみました。

この機関車の
台枠内幅は4'10-3/8"、厚さは7/8”、
内火室内法は5'8-11/16"x3'5-7/8"、
外火室外法は6'4"x4'1-1/16"です。

投稿: クラーケン | 2014年8月28日 (木) 22時00分

3900のシリンダー側面がそのまま立ち上がってランボードにつながるタイプは16番にすると大変ですが、3920のようなシリンダーの上が丸くなってランボードとつながっていないタイプは模型化設計が楽ですね。
でも私は3900の方が好きかな

投稿: ゆうえん・こうじ | 2014年8月29日 (金) 00時35分

まいど
共同でやらへんかーー
クラーケン設計、こちら工作担当、、どうやろなー。
、、、、コダワリの所と妥協の所がお互い逆さやから、空中分解かな!。

投稿: ハタ坊 | 2014年8月29日 (金) 15時54分

ゆうえん・こうじ様
16番で作れる幅を広げる必要がほとんどない機関車って作ってみたいなぁ・・・
けど、ハタ坊から恐ろしい誘惑が・・・・
多分強みと弱みも逆さなんで、2人で2両作ったら面白そうやなぁ。
だんだんアプトをやりたくなってきた。

投稿: クラーケン | 2014年8月29日 (金) 18時52分

>16番で作れる幅を広げる必要がほとんどない機関車って作ってみたいなぁ・・・
そりゃ日本型蒸機では無理でしょう!!
やはり何かを犠牲にしないとムリだと思います。
16番では車体幅の広いシロクニで、ランボード幅がスケールに治まっても、シリンダー上部が末広がりになっていないだけでも気に入らない方も多いようです。

私は逆に車体幅の誤魔化しを考えるのがパズルみたいで好きです。

投稿: ゆうえん・こうじ | 2014年8月29日 (金) 23時59分

ゆうえんさま
C62やD52でシリンダ上部が広がっているのは一部だけですよ。
16番の設計は、幅とのせめぎあいが非常に面白いですが、線路の精度等、限界が低くて車輪幅は2.0mm程度が限界のようで難しいですね。
その点13mmゲージのファインやOJゲージは線路の精度が良いので、非常に楽に設計できます。
一度、苦労しなくてよい13mmゲージかOJで作ってみるのも楽しいかもしれません。
あぁ、ゆうえんさんがされている1/87は規格を知りませんし、全く興味がないのでコメントできません。

投稿: クラーケン | 2014年8月30日 (土) 01時29分

前に見つけたサイトのなかに竣工写真も組立図もありました。
http://emu.msim.org.uk/web/objects/common/webmedia.php?irn=11870
http://emu.msim.org.uk/web/objects/common/webmedia.php?irn=15788

投稿: railtruck | 2014年12月27日 (土) 16時04分

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