« 一枚の図面から 26-3 機関車のバネ装置 3 | トップページ | 一枚の図面から 26-5 機関車のバネ装置 5 »

2014年6月20日 (金)

一枚の図面から 26-4 機関車のバネ装置 4

実物の例を数点紹介しましたが、ここで、イコライザーの知識と考え方の説明をしようと思います。

イコライザーの最も基本的なものはこのようなものです。
1l
  上段の「模式図」に書いたように、軸箱をビームで結び、その中央(変える場合もある)で、回転できる構造になっていて、そこに荷重が掛かります。
このようにすると中央1点の荷重が前後に均等に分配することが出来、さらに軸箱の上下の動きも可能となります。
  実際にはこれにバネが入るので、2段目以降のような構造になることが多いです。
これは、バネ装置の前後端は台枠にピンで受けて、重ね板バネとイコライザーによって、模式図のような動きを比較的小さい部品で構成しています。
  図ではちょっと分かりにくいですが、軸箱の上の弓形の物が重ね板バネで、このバネ自体がイコライザーの役目も果たします。
 
  重ね板バネは非常に大きなファクターで、その特性は、板バネを重ねることにより、板同士に摩擦が発生し、ある程度の荷重までは固まりの状態で一体化し、摩擦限度を超えればバネとして作用し、その摩擦力によって減衰効果もあるという、非常に優れたバネです。
この減衰効果はコイルバネや空気バネには無いので、重ね板バネを使わなくなった現代の鉄道車両では、通常のバネに加えてオイルダンパなどの減衰装置を併用していますね。
  なぜ近年はこのすぐれた重ね板バネを使わなくなったかというと、まさに、ある程度までの荷重ではバネの効果がないという事で、細かい振動や衝撃吸収には効果がない点です、要するに乗り心地を一定以上にはできないという事です、ですから重ね板バネを使った台車では細かい振動吸収にコイルばねを併用することがよくあります。
 
イコライザーを使ったバネ装置には絶対的に使われていて、板バネ自体がイコライザー装置の一端を担い、バネにもなるという2役をこなしているわけです。
  図では、重ね板バネはバネの撓みは無い状態ですが、この状態でも十分にイコライザーとしての役目を果たします。
  実際には、模式図のビームをそのまま重ね板バネにした簡便な物も存在しますが、軸距離が大きくなると板バネのスパンが長大になるので、短い軸距離に限られます、その構造は現代の大型トラック等にも使われています。
 
ここで、注意していただきたいのですが、図の下の2段は、イコライザーが動いて線路と台枠が平行でない状態を表しています、まさに走行状態の車輪の動きなんですが、
この図では、当然ながら、イコライザーの中央でシーソーのような状態で、台枠の前後は全く安定しない状態です。この構造のイコライザーを2軸の車両の左右の車輪のところに設置した場合、車両の前後は上がったり下がったりすることになり、使い物になりません。
  ですから、通常はこれに加えてもう1軸、上下方向を規定させる車輪が必要になります。
それは前回説明した1255に相当するわけで、この構造のイコライザーを第2第3軸の左右、そして第1軸の中央で左右方向にスイングするイコライザーを付けて安定させたもので、第1軸中央で1点、第2、第3軸中央の左右で2点の計3点で支持して、一般に3点支持と呼ばれます。
この3点支持の別のタイプを示します。
4l
上の模式図は、車両を上から見たもの、下段の図面も上から見たものを展開したもので、左の図は前から見たもので右側が上方向です。
1255との違いは前方の1点を1軸だけではなく、第1、第2軸をイコライザーで結んで、荷重点を1点にしながら自由な動きを与えているという事です。
第1、第2軸が1点なので、第3軸は左右を各1点の独立懸架で良く、自由度が大きい構造です。
下の2枚の図で、各軸が単独で動いてもイコライザーの動きでうまく均等化されるのが理解できるかと思います。
 
  このタイプのイコライザーは重要で、第1、第2軸の構造を後ろに伸ばして3軸、4軸にすることも可能ですし、第3軸の部分を上記の左右のイコライザーにして、車輪を増やすことも可能です。
  実はこの構造は、近代機や電気機関車に至るまで、1軸先台車や先台車なしの機関車に非常に多く採用されていて、左右に渡る部分が先輪になったりします、有名なD51もこの構造です。
  2軸の場合のイコライザーは、中央の1点でイコライザーが回転するのがわかりますが、3軸やそれ以上になった場合はどうなるのでしょうか?
実は全く同じ構造なんです。
2l
  今度は模式図ではなく「水平」を見てください。2軸の場合と全く同じでしょう?
軸が増えただけ連動を増やすだけですから、いくらでも増やすことが出来ます。
  3軸になった場合の模式図はちょっと複雑で、第1、第2軸間のイコライザーと、第2、第3軸間のイコライザーがそれぞれ独立していて、それらのイコライザーを結ぶイコライザーが全部の荷重を担って、回転もそのイコライザーの中心で行うというものです。
軸が増えるとこの構造がどんどん上に上がりますが、実際の構造の方が単純ですね。
 
  ここで注意したいのは、下部のイコライザーの荷重は中央の軸に前後の荷重が合わさるので、荷重点は1:2の位置にする必要があるという事です。これをしないで前後を中央にしてしまうと中央軸のみ前後の軸の2倍の重量が掛かってしまいます。この例、客車用の3軸台車、TR71や74等で荷重を受けるバネの位置が1:2の位置になっていることで確認できますよ。
この例は軸距離が均等の場合ですが、均等でない場合も問題なしです。
3l
  軸距離が短いところはイコライザーも短くすれば良いだけですが、イコライザーの角度に限界があるので、軸距離にも限界があります。
  これら3軸の場合も、2軸の場合同様、台枠前後はシーソーのように自由に上下しますが、この構造に2軸先台車を付ければ先台車中心が1点となり、非常に安定した物が出来上がります。
  当然、そこら辺の製品のように、先台車にコイルばねなどを入れると飛び上がってしまいますよ。
2軸先台車を持ったC51、C57からC62に至るまで、2軸先台車を持った機関車は全てと言って良いくらいこの構造です。
上記の1軸先台車の例と2軸先台車の例、EF15とEF58が良い対象例です。後で個別に説明しようと思っています。
  私が作る模型は、基本的に全部イコライザーを付けますが、1/80のため実物通りの構造は板バネを受けるφ46の釣ボルトがS0.6のネジを使う必要があり、強度的に自信が無くて、模式図のような構造で作っていますが、昨今は1/80でもちゃんと作られる方が居られてうかうかしてられませんね。
 
多少オーバーとはいえ、K社のC51のように、この機構を再現して(動輪のみ)いるすばらしい製品も出てきたりして興味が尽きません。
  このC51が発売された当時の雑誌の紹介で、イコライザーの構造を理解していない人が記事を書いて、先台車に上下動を与えなければダメとか書いていて大笑いした覚えがあります、
その次の号でメーカーが対策と称した実験記事が出てましたが、メーカーの担当者は困ったでしょうねぇ・・・
それに懲りたのか、それ以降こういう素晴らしい製品が出なくなったように思うのは残念なことです。

|

« 一枚の図面から 26-3 機関車のバネ装置 3 | トップページ | 一枚の図面から 26-5 機関車のバネ装置 5 »

一枚の図面から」カテゴリの記事

模型」カテゴリの記事

蒸気機関車」カテゴリの記事

鉄道車両の機構」カテゴリの記事

コメント

そんなことがありましたね。

時々先台車にバネを入れている方があって、文字通り、飛び跳ねます。Oゲージの場合、バネなしでは壊れることがあるので、ゴムのワッシャと金属ワッシャを交互に重ねたものに替えることを勧めています。静かで、安定した走りが得られます。

>このC51が発売された当時の雑誌の紹介で、イコライザーの構造を理解していない人が記事を書いて、先台車に上下動を与えなければダメとか書いていて大笑いした覚えがあります

投稿: dda40x | 2014年6月20日 (金) 06時08分

dda40x様
Oゲージ以上になると、実物同様のイコライザーは当たり前でしょうね、従来の軸バネ構造のように動輪群だけで全体の水平を出すと、先台車は単なる付属品になって、単に脱線させないためだけにバネで荷重を掛ける事になりますが、実物通りのイコライザーにするなら先台車で機関車の水平が決まるのでバネを入れるのは言語道断ですね。
高さにほとんど影響を与えずに緩衝をするのに、ゴムは非常に良いと思います。
私もイコライザーにはバネを併用しますが、バネを介するとジョイント音がソフトになっていいですね。
環境や経年で硬化するので、私は使ったことはありませんが、簡便な方法として良い方法と思います。

投稿: クラーケン | 2014年6月20日 (金) 12時37分

K社のC51ってあれのことですね?

投稿: 三木の干し殺し | 2014年6月20日 (金) 20時41分

そう!あれです。

投稿: クラーケン | 2014年6月20日 (金) 20時49分

クラーケンさん こんにちは。
論文のようなコラム!クラーケンさんの本領発揮ですね。いやいや素晴らしい!
拙作をご観閲いただきどうもありがとうございました!おおいに励みになりました!

投稿: 隊員 | 2014年6月23日 (月) 13時13分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1974466/56553648

この記事へのトラックバック一覧です: 一枚の図面から 26-4 機関車のバネ装置 4:

« 一枚の図面から 26-3 機関車のバネ装置 3 | トップページ | 一枚の図面から 26-5 機関車のバネ装置 5 »