2019年5月31日 (金)

一枚の図面から 50-16 機関車編 9600 改造編 5

9600、いよいよ最後です。
最後は戦時中に大陸へ送られた、標準軌間に改造された機関車たちです。
1938年から39年にかけて250両が改造されて華北、華中方面に送られました。
現在、中国には1mゲージの9600も存在しますが、それらは標準軌のものを再改造したようです。

まずは写真から。コピー機による複写のスキャンなので、画像に関してはご容赦ください
鷹取工場による改造車79672
79672

大宮工場による改造車59628
5962819390721-1
5962819390721-3

大宮工場による改造車59645、回送中
5964519390721-1
5964519390721-2
ランニングボードの広がりがよくわかりますね。貨車はチキ300でしょうか。

現地に着いてからと思われる19689
19689_2
19689_1

次は図面です。
9600-1
9600-2_1
比較のために、2次型の断面です。
410-1dh2-9600-012_stitch-l

軸箱守やばね装置を外側に移して、シリンダ取り付け部にスペーサを入れたことがよく分かります。
改造図はもう一枚、シリンダ部です。
411-1dn2-9600-008_stitch50up-l

ここまでの資料を踏まえて、実際の寸法関係から、どのような感じなのか具体的に検証しました。
この図は、改造前の図面を元に、上記の図面の寸法になるにはどうなるかを検討したものです。
まずは改造前
96001_1      
線が細くて見にくいかもしれませんが、緑色が軸箱守、赤色が軸箱、736.6という寸法の1点鎖線は軸箱の中心、すなわちバネ装置の中心です。
左は元の車軸(動軸)です。

次は、台枠はそのままに、軸箱守、軸箱、バネ装置を台枠の外側に付けた状態です。
96002_1
その結果のバネ中心(軸箱中心)間隔は1104.9mm、単純にゲージの差分より片側12.4mm内側になっていることがわかります。
車軸はゲージ差分を延長してみたところ、軸箱の内側が干渉し、外側にガタがあります。

恐らく設計人もここまでの検討をしたはずで、バネ中心がゲージ差分より内側であったのが非常に幸いします。
これが外側であったなら動輪のボスの内側を削るか、軸箱中心とバネ中心がずれた気持ちの悪いものを作らねばならず、実際に行った工事よりかなり大がかりとなったと思われます。

とはいえ、ゲージ差分の12.4mmは存在して、それを克服する必要がありますが、それは車軸の軸箱中心をずらすことによって解決できます。
バネ中心を図面に合わせ、車軸はどのみち新製になるので、図面上の設計変更だけで済みます。
その状態がこれで、おそらく車軸はこのような寸法になっていると思われます。
96003_1
私は、標準軌に改造するにあたり、軸箱を反転させたら簡単に改造できるということを「偶然見つけた」ということに懐疑的で、
朝倉希一が設計時に師匠であり、広軌改築論を強力に推していた島安次郎の意を汲み、将来標準軌への改造が楽に行えるように、軸箱を反転することを見越して設計したのではないかと考えておりました。
  しかし、そうであるなら、初めから上記の12.4mmはずらしての設計が可能なので、そうしていなかったことにより、私の懐疑は晴れて、やはり偶然発見されたというのが正解だったと証明されたと思います。

以上、長きにわたった9600はこれで完結します。

次からは従来通り日々のことを書いていければいいなと思っております。

| | コメント (3)

2019年5月29日 (水)

一枚の図面から 50-15 機関車編 9600 改造編 4

9600、少数派、試験的なものの続き。

3、重見式給水加熱器
大煙管を使用した簡易方式の給水加熱器で、
C10や11の初期に装備されていたものが有名ですが、この装置も9600で試験したようです。
6844968519341117l
この装置は9600用は無く、明細図のC10の図だけです。
1940-p62l
1940-p63l
詳細
1940-p64l

この方式は、インジェクタを使うのですが、高温の湯はインジェクタの効きが悪いそうで、性能はあまりよくなかったそうです。

4、給水加熱器、本省式の初期の例
一般的なものは以前に紹介しましたが、初期には別のものがありました。
5794962634
1927-p390l
1927-p391l
9900の初期の写真で見たことがあるかと思いますが、後の物とは違うタイプの給水ポンプが特徴的です。

給水加熱器、だいぶ小型です
1927-p388-l 
給水ポンプ
1927-p389l
このタイプは以上ですが、どの項に入れるか迷った、一般型のウェア式給水ポンプの取付図です。
9600-143-p136

この項の最後に、給水加熱器のほかの例を。
19650328_1-08-19697-l
次回は、いよいよ最後、大陸へ渡った広軌(標準軌)改造です。

| | コメント (0)

一枚の図面から 50-14 機関車編 9600 改造編 3

9600の改造の続き。
今回は、比較的両数が少ないものや、試験的なものを紹介します。

1、住山式給水加熱器
C51では比較的有名な過熱器ですが、9600や8620にも存在します。
先ずは写真から。
4943964119371007_1     
名称図解の略図、2種類あります
1927-p392l
1927-p393l
1927-p395l
煙突の後ろの分油器と通水加減器
1927-p394l
明細図です。
9600-151-p144
2、細管式給水加熱器
C50で正式採用になった物ですが、9600で試験したようです。  
写真で確認できるものは1枚だけ見つかりました
706596072l 
炭水車前方下部に点検ふたがあるのがこの方式の特徴ですが、点検ふたが無いものも有ります。
名称図解の略図、点検ふたがあるタイプ。
1940-p56l
1940-p57l
温め器本体の詳細
1940-p58l
明細図、点検ふたがあるタイプ
9600-141-p134l

点検ふたがないタイプ
9600-150-p143l
今回はここまでとします。

| | コメント (0)

2019年1月13日 (日)

一枚の図面から 50-13 機関車編 9600 改造編 2

9600の改造の続き。

空制に伴い、運転室に大きいブレーキ弁が追加になったために手狭になったようで、この9600(2次以降)をはじめとして、C51もD50も運転室後妻を斜めから普通に直角にして、さらに後ろにずらして延長しています。
再掲ですが、改造前
9600_121_p114_2
後妻板が斜めになっていますが、2次型は側板の長さはそのままで後妻板が直角なのでさらに狭いものとなっています。

改造図
9600_122_p115_2
側板後部の縦帯でリベットが2本並んでいるところで継いでいますね。
側板の長さ1460は元の長さで、その後ろの205が延長分ですね。
窓は1168.4mmだったのを1354mmに広げています、寸法のアンダーラインは図のスケールとは違っていると言う事です。
延長とは別の理由ですが元の天窓の後ろに、天井クレーン等による吊り上げ時にワイヤを通すための釣上天窓が追加になっています。リフティングジャッキだけではなく大きいクレーン設備の装備による変化ですね。
図面の日付が消されているのですが、大体昭和11年ごろには大方の改造が終了したようです。
運転室床板の改造図です。
9600_123_p116
改造間がない頃
7855968319340600_2

時代の趨勢での改造
電灯設備です。
La6073_9600_166_p159
速度計装置
9600_164_p157
これらの改造を経て、一般に見られる9600になりました。

今回はここまで、次回は少数の物や試験的な改造を紹介します。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年1月 8日 (火)

一枚の図面から 50-12 機関車編 9600 改造編 1

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

このところの多忙で、9600も年をまたいでしまいましたが、もう少しで完結です。

鉄道院での9600の新製は1926年に終了しましたが、時代は製造時からどんどん進み、大正14年の自連取替、空制化のような大きいものを始めとして給水加熱方式の実験など、色々な改造が施されてきました。今回はそれらに少し触れたいと思います。

先ずは、大正14年の自動連結器の一斉取替に伴う改造です。
9600_082_p075
当初の簡易な解放テコの自連交換の準備図です。
この図ではバッファとフックは元のままで、実際の交換時にはバッファを撤去し、中央の連結器を交換するだけです。
連結器改造に伴い、真空ブレーキ管が直立タイプから端バリ下部取付に変更されました。

使用例です(新製のもの)。
準備工事
97879626

自連後

86979669_2

大正14年11月24日からこの図に変わります。
9600_081_p074
解放テコが左右から操作できるものになり、真空ホースの受けの位置が変わりました。

このタイプはいくらでもあるので、写真は省略します。

空制化
前回の新造時からの空制図によって改造したものや、各工場独自で改造したものなど多種多様になっていますが、ここでは図面が有るものを挙げていきます。

配管図
La30029_9600_115_p108
La30030_9600_116_p109
図面集にあるのはこのタイプだけ。
意外と、変形機と呼ばれるこのタイプが標準なのかもしれません。

ランニングボード
La30031_9600_071_p064
La30037_9600_073_p066
Lb31114_9600_074_p067
タンク受け
9600_080_p073
煙室横の蒸気管被い
Lb31111_9600_087_p080
参考写真です。
370800_96002253

76960319360310

82269620

給水加熱器を装備したため、変形しています。

95679616_1

95679616_2

95879618

今回はここまでです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月17日 (水)

一枚の図面から 50-11 機関車編 9600 69666-79669

9600、国内最後のグループは、1923年(大正12年)製、D50の製造が始まる年ですが、この増備から空気ブレーキ装備になります。

いつもなら台枠からですが、今回は一番特徴的な空気配管図から。
La3037_9600_114_p107_70
もう一枚、給水ポンプ装備車の配管図。
La6052_9600_139_p132
台枠図、ランニングボード等の変更です。
La3033_9600_068_p061_70
ランニングボード
La3041_9600_070_p063_70
Lb3213_9600_072_p065
空気ダメ受け
La3043_9600_078_p071
この4枚は川崎製の物を示し、汽車会社製は空気ダメがもう少し上に付きます。

コンプレッサ受
9600_120_p113
冷却管受
9600_118_p111_1
圧縮空気が使えるようになったので、このグループからは砂撒きが空気式になりました。
砂撒装置
Lb6251_9600_162_p155
砂箱
Lb6159_9600_163_p156
このグループの最終増備の1925年製の79630-79637の一部及び1926年製の79658-79669は自連装備で出場しました。
その図面
9600_082_p075
最後にこのグループの竣工写真。
90669666

97879626

最終番号は左右
86979669_1

86979669_3
このグループは以上です。

次回は製造後の改造などです。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2018年9月28日 (金)

一枚の図面から 50-10 機関車編 9600 49602-69665

9600も製造開始から7年経った大正8年になり、台枠が変更になりました。

変更理由は機関車のブレーキが真空ブレーキから蒸気ブレーキに変わったことによるものと思われます。

大正8年といえば18900(後のC51)が出来た年で、今回の9600の変更は18900のブレーキシステムと同調したものと思われます。

では、そのブレーキシステムから見ていきます。
9600_209_207
今回からの蒸気ブレーキシリンダ
9600_227_225
  真空ブレーキの時は、台枠の両側に真空のブレーキシリンダが付き、ブレーキテコを引き上げて制動が掛かる構造でしたが、今回の変更でブレーキテコを押し下げて作用するタイプの蒸気ブレーキになりました。

  変更理由としては、大正12年から採用される空気ブレーキとの関わりがあります。
  空気ブレーキのブレーキシリンダは、日本では全てシリンダ後部から空気を入れてピストンを押し出すことによりブレーキが作用する形なので、真空ブレーキのピストンを引いて作用するのとは逆作用になります。

  将来の空気ブレーキへの改造に際しては、従来の真空ブレーキではブレーキ軸や軸受、ブレーキシリンダの取り付け方など大幅な改造になりますが、空気ブレーキと同様のピストンを押し出すタイプの蒸気ブレーキにすれば、ブレーキ軸受等の変更がなく、部品交換と台枠の比較的簡単な改造で済むようになります、今回の台枠の変更はこれに即したものになりました。

それでは、その台枠です。原版は横長なので、左右に分割しました。
9600_196_1942_2
9600_195_1941
ランニングボードは美しい直線で、上面は網目等がないフラットな板、さらに縁取りの補強等を取り付けるリベットは上面がフラットな皿リベット。

川崎造船が主体になって製造した機関車は、D50の途中までは網目板は使わず、美しいフラットなランニングボードだったんですよ、なお、汽車会社が主体となって設計した8620は川崎造船で作っても網目板を使っています。

主台枠の板は1インチ(25.4mm)です、9600の特徴的なフロントデッキに円弧状に出ている板は、この台枠が出ているのがこの図で分かりますね。

今回の変更では、台枠後部のブレーキ軸の軸受とブレーキシリンダ取付関係が大きく変わっています。

図面はあと一枚、管装置です。
9600_238_2351_stitch_50
管装置は組立図の代わりにもなりうるほどの情報量がありますね。
真空ブレーキタイプの最後の配管です。

最後に原形写真を少し。
76659664

81669614

84469642

この3枚の写真のナンバープレートは全部エッチングですねぇ、この頃の流行りなのでしょうか。

次回は国鉄最後のグループです。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2018年9月12日 (水)

一枚の図面から 50-9 機関車編 9600 19683-29637,29653-49601

9600、次のグループは19683-29637,29653-49601です。
1918年の汽車会社製から始まりました。
29638-29652が飛んでますが、これらは同年小倉工場で作られたグループで、前グループの仕様で製造されました。
このグループからの変更点はわずかなんですが、運転室の窓が、二枚から一体の大きいものに変更されています。
 
運転室の図面です。
9600_121_p114_2
窓以外は変更が無いようで、後部妻板は傾斜していますね。
このグループの途中39613から自連への交換の準備が始まり、フックの取付部が変更されました。
9600_176_175_39613
フックの周りの幅368mm、高さ203mmの間隔の1-1/4”の4本の穴が自連の取付穴です。
これ以前の自連を考慮しない図がこれ。
9600_175_174
比べてみるのも面白いですね。
このグループの追加図面はこれだけで、次のグループから蒸気ブレーキに変わります。
汽車会社の公式写真です。
撮影した状態
75247_19686l
修正したもの
P8_19686l
 
もう1枚
36039614l
このシリーズはここまでです。
次のグループから、台枠が変わります。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年9月 8日 (土)

一枚の図面から 50-8 機関車編 9600 9658-19682,29638-29652.

9658~19682,29638~29652のグループの続きです。
管装置
9600_236_234
制動装置

9600_208_206

手用制動装置
9600_207_205_2
一見制動装置と同じように見えますが、ブレーキテコが違うタイプとなっていますね。

灰箱
9600_033_031
汽笛座
9600_088_088
当初の火室左側面取付のもの

このグループの図面はこれだけです。
続いて写真を少し
小倉工場製29652
152965234

戦前のもの
3181962819370405

昭和24年
217968019491200_1
同じ機関車
217968019491200_2

このシリーズはここまでです。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年5月26日 (土)

一枚の図面から 50-7 機関車編 9600 9658-19682,29638-29652.

  9600、今回からは本格的に大量に量産が始まったグループ9658~19682と少し飛んで29638~29652のグループを見ていきましょう。
製造は大正4年から7年で、15両の小倉工場を除き全部川崎造船製です。
 
先ずは組立図
9600_001
  一見前回のグループと似ていますが、外観上の大きな変更点、運転室をご覧ください、
後ろの妻板が平面で斜めになっているのがお判りでしょうか。
運転室は一旦最初のグループから大幅に縮小されましたが、すこし小さくしすぎたようで、今回のグループからは側板はそのままで後ろの妻板を斜めにして後部に広げた格好です。
  側板を延長しなかったのは、設計上の最急カーブで炭水車の側板前端との間隔に余裕がなかったせいで、機関車全長を切り詰めた影響が出ています。
後に空気ブレーキを装備した時にブレーキ弁のせいで狭くなって、運転室を後ろに延長しましたが、その時は機関車と炭水車の間の連結棒を延長して対処しました。
  番号が飛んでいる29638~29652は小倉工場製で、製造年はこのグループと同じです。
 
その運転室
9600_257_253_2
側窓は小窓が2つ、縁取りは直径38.1mmの半丸、屋根に断熱のための段差があります。
 
次はボイラ
9600_006_004
安全弁カバー等古い状態で書かれている部分もありますが、9688号以降の図です。
9658号から大煙管が21本から22本になり、過熱量が増大されました。
 
次は煙室
9600_009_007
9658号以降の図です。シリンダから排気のブラストノズルが改善されています。
 
蒸気ドーム
9600_016_014
図面は9698号以降です。
 
火室のクロスステー
9600_014_012
これのカバーが火室の横に出ていて目立ちますね。
 
久しぶりに再開したので、今回はこれ位にしておきます。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

«一枚の図面から 50-6 機関車編 9600 9618-9657